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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第22章 其の女【薄桜鬼】


女には苦労した事が無い。

態々口に出して言う事でも無えと思うが、真だからまあ良いだろう。



俺は特段、女好きな訳じゃ無いんだ。

………嫌いでも無えが。

だが市中を一寸歩いて居れば、其処彼処から女共の熱っぽい視線を投げ付けられ、中には震える声で「土方様」と声を掛けて来る強者も居た。

そんなのを一々相手にしていられる程暇を持て余してはいないが、それでも俺だって男だ。

不逞浪士と斬り合ったり、維新志士の輩共と対峙した夜なんかは昂った気味合いに順応した身体が疼き、下半身が熱を持った。

そういった場合に置いて、俺は女に苦労しなかったという事だ。



一言声を掛けて出会い茶屋にでも連れ込んでやれば、女は簡単に俺の前で股を開く。

当然その晩限りの睦み合いだが、後に何だかんだと面倒臭え事を言う女は居なかった。

俺がそういう女を選んでいるってのもあるが。



まあ、俺と原田ぐらいだろうな。

こんな風に上手く立ち回れるのは。

他の幹部共は其方の事情には中々苦労しているらしい。

結果、新選組連中は島原で女を買う習慣が染み付いたって訳だ。

女を買う事も、買われる女にも、嫌悪感なんぞは全く感じねえ。

持ちつ持たれつ、両者にとって好都合な良く出来た仕組みだと思うぜ。

只、俺はその仕組みを利用する必要が無いってだけの話だ。
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