第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】
モジモジと立ち尽くす私の前には、慶喜さんがキチッと正座をして居る。
そして私の顔を見上げて
「さあ……。
脱いで見せて。」
と、操るんだ。
流石に自ら裸体を晒す羞恥に躊躇っていると
「その素敵な衣装を私の手で剥ぎ取るのも一興だけど
勝手が分からず破いて仕舞う訳にもいかないからね。
さ……出来るだろう、?」
穏やかだけど、でもだからこそ逆らえない声色で煽られてしまう。
今、私が着てるのは現代のワンピース。
晴明さんとこっちに戻って来てから、この時代の着物に着替える機会が無かったから。
背中のファスナーに胸の大きな飾りボタン……
きっと慶喜さんは初めて目にする物の筈だ。
それで「勝手が分からないから自分で脱いで」と言っているんだろうけど……
でも絶対それだけじゃない。
だって今の慶喜さんの目には紛れもなく妖し気な色が浮かんでる。
「……」
小さな子供を窘めるように名前を呼ばれて、遂に私の手は背中に回ってゆっくりとファスナーを下ろし始めた。
ジジジ…と鳴る微かな音。
下ろしきった後ワンピースをスルッと肩から落とせば、輪を描いて私の足元に溜まる。
ブラとショーツだけの姿になった私の全身を舐めるように見渡した慶喜さんは小さく息を吐いた。
「ああ………美しいな。
が居た時代の女性は皆、
その様な衣装を身に着けているのかい?」
「…………はい。」
「うん、とても綺麗だよ。
でもね………」
スッと立ち上がった慶喜さんはそのまま私の身体を抱え込み、その両手が背中に回る。
「に触れるには……とても邪魔だ。」