第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】
「さよなら。」
「残念だけど、君と私では生きる世界が違い過ぎる。」
「さようなら……元気で。」
「私はずっと君の幸福を祈っているよ。」
たったこれだけの言葉で……私と慶喜さんは終わった。
将来を約束してた訳じゃないし、身体を捧げた訳でもない。
お互いに「愛おしくて堪らない」と雄弁に語る視線を絡ませ、優しく抱き締め合って、口付けを交わしただけ。
それでも、この先も慶喜さんと一緒に生きて行けるって……
私は全てを捨てて、慶喜さんの側に居ようって……思っていたのに。
………だけどそれは私の独り善がりだったみたいだ。
一切振り返る事もせず、去って行く慶喜さんの後ろ姿が涙で滲んだ。