• テキストサイズ

孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第15章 爛熟の刻【薄桜鬼】


それは二尊院の御守り。

は江戸の生まれだから当然知らねえだろうな。

俺は伊予松山藩出身だ。

だから話には聞いたことがあった。

「左之さん……何か知ってるの?」

俺の様子を見咎めてが少し不安そうに問うて来る。

「、これは二尊院っていう安産祈願で有名な寺の御守りだ。」

「そうなの?」

は嬉しそうに目をぱちぱちと瞬かせた。


「ああ……
 二尊院は長州に在る。」


途端に耀いていたの瞳がじわじわと滲み出し

「じゃあ……これ…」

御守りを持つ俺の手を両手でそっと包んだ。

そしてその手に唇を寄せ、涙声で囁く。


「ありがとう………不知火さん。」




御守りを大切そうに握ったまま、俺の腕の中でくうくうと熟睡するを見つめながら俺は考えていた。

生まれて来る子が男ならば『匡』と名付けたい……と。

きっと不知火は「気持ち悪いから止めろ」と照れて笑うだろう。

まあ、不知火の了承を取るつもりは無えけどな。

でも当然には認めてもらわなきゃいけねえ。

明日にでもと話してみるか。

恐らくはにこにこと微笑んで頷いてくれるだろう。

そんな事を考えながら俺も一つ鼻で笑い、の身体を少し抱き寄せてゆっくりと瞼を閉じた。





原田左之助エンド 了
/ 834ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp