第15章 爛熟の刻【薄桜鬼】
男二人の欲望を全身で受け止めたは、ぐったりと布団に横たわり、呼吸を荒げたまま虚ろな視線を漂わせている。
その両脇に俺と不知火も大の字になって寝転がっていた。
こうして爛れた行為を終えて冷静になってみると、何て事を仕出かして仕舞ったのかと今更ながらに後悔の念が湧き起こる。
いや、後悔という言葉は適当じゃねえ。
は近藤さんの縁者なんだ。
絶対に危険な目には遭わせないから、必ず守るからと近藤さんに誓った筈であるのに。
こんな危険な目なんて曖昧な言葉じゃ温い程にを穢して仕舞った。
への贖罪は元より、これじゃ近藤さんにも顔向け出来ねえよ。
自責、自戒、自省………兎に角俺は絶え間無く自分自身を責め立てていた。
「はああーーー…」
その時、不知火が大きく息を吐き出しに向かってごろりと身体を転がす。
まだ何かをするつもりなのかと俺も隣で横たわるに視線を向けると、不知火の手が大切で仕方が無い物を扱う様に優しくの全身を擦っていた。
「………
忘れられたか?」
ふいに不知火の口から柔らかく紡がれた言葉。
俺には何の事だか全く理解不能だったが、はびくりと身体を弾ませると震える声で不知火の問いに答える。
「………知ってるの?」
「ああ、惚れた女の事を色々調べている内にな。
手前ェの実家についても彼是と探って……それで、気が付いた。」
「ふっ…あああ……ぅわああ……」
途端にが堰を切った如く、大声を上げて泣き出した。
そんなを不知火の両腕が引き寄せ、胸に仕舞い込む様に抱き締める。
「………
泣かなくたっていい。
手前ェは何も悪くねェんだから。」
一体これはどういう状況なんだ?
は何故、これ程に泣いている?
不知火はの何を知っている?
俺は唯々動揺しちまって、お互いに縋り合うと不知火を黙って見ているしか出来なかった。