第2章 徒桜【るろうに剣心】
指先をぴくりと動かしてみる。
どうやら麻痺は治まって来た様だ。
翠とその『父』が、命を懸けて創ろうとした新時代。
其れを志々雄真実如きに壊されて堪るか。
抜刀斎の助太刀をするつもりは無いが、俺にも志々雄真実を倒さなければならない理由が在る。
麻痺が解けた所為で、飛天御剣流の奥義を受けた身体にぎちぎちと痛みが走る。
その痛みに顔を顰めて立ち上がり、俺は小太刀を手に取った。
この先の闘いは恐らく俺の人生最大の死闘になるだろう。
志々雄真実とは、あの抜刀斎ですらが決死の覚悟で向かう男だ。
だが抜刀斎は『倒れる訳にはいかぬ』と言った。
ああ……そうだ。
俺も倒れる訳にはいかない。
俺にも『帰るべき場所』が在るのだからな。
大丈夫だ……翠。
必ず生きて戻る。
俺が生きてあの桜の下に立った時には
『ありがとう………蒼紫様。』
そう言ってまた儚げな笑顔を見せてくれるか?
手にしている小太刀を目線の高さまで持ち上げ、強く握り締める。
今まで良く働いてくれた。
これを使うのは今日が最後になれば良い。
「さて………行くか。」
己を奮い起たせるように呟いて……
俺は新時代の光の中に向かうべく、一歩足を踏み出した。
了