第14章 God bless you【ドリフターズ】
「……夫?」
「はい。
夫も漂流者(ドリフ)なんです。
戦闘機の操縦士で、きっと今も戦ってる…」
「セン…トウキ?」
ああ、この人は戦闘機を知らないんだ。
まだ飛行機が無い時代からこの世界に来たのだろう。
だから私は身振りも加えて説明した。
「こう……翼が在って、鉄で出来ているんですけど
自在に空を飛べて……っっ!」
突然、身を乗り出した彼は痛い程に私の手首を掴む。
「あの火を噴く鉄の鳥を操っていたのは、貴様の夫なのか!?」
この人…紫電改を見た事があるみたいだ。
「……はい。」
私が小さく頷くと、彼は耐えられないと言った様に大声で笑い出した。
「皮肉なものだ。
俺の邪魔をした奴の妻を助ける事になるとは……。」
『空神様』がこの人の邪魔を?
一体何があったのだろう。
それではやはり、私など見棄てられても………
「貴様は『新撰組』を知っているか?」
聞こえたのは突然の問いだった。
新選組………それは確か……
「夫が隊長を務めた部隊の名称です。」
「………何だと?」
「江戸の終りに実際に存在した組織に憧れて
名付けたと言ってました。」
そして彼は再び大声で笑い出す。
今度は何故か………とても嬉しそうに。
「着いて来い。」
一頻り笑った後に予想外の言葉を掛けられた。
「良いんですか?」
「俺は漂流者(ドリフ)に遇う事は出来ん。
近く迄で構わなければ…だが。」
「勿論構いません。
ありがとうございます!」
そして私は不安さを顕に引き留める犬族の皆に「必ず戻るから」と約束をして、彼の背中を追い掛けた。