第14章 God bless you【ドリフターズ】
「……消えた?」
『空神様』が少し驚いた表情で問う。
「ええ、綺麗さっぱりと…ね。」
それに答えたのはサン・ジェルミさん。
一体何が消えたのだろう?
遠くから片手間に話を聞いていた私には『何が』消えたのか分からなかった。
最初に『空神様』が此処に戻って来てくれた後、私達は三献の儀を執り行った。
在り合わせの道具で真似事の様な儀式ではあったけど、これで私は『空神様』の妻になれたのだと思うと堪らなく嬉しかった。
その後も何度か漂流者(ドリフ)と呼ばれる人達が此処を訪れ、『空神様』はその度に紫電改で戦いに向かう事になった。
いつも私に口付けながら「必ず戻る」と約束をして……。
そしてその言葉通り『空神様』は私の元へ帰って来て、また口付けてくれる。
漂流者(ドリフ)と呼ばれる人達……私と『空神様』もそうであるらしいのだけれど。
晴明さんはどんな時も私を気遣ってくれる。
ブッチさんとキッドさん……初めて会った時は正直怖かった。
『鬼畜米兵』……呪文の様に私に刷り込まれていた言葉がそう思わせたのだろう。
でも何度も顔を合わせてみると、とても気さくで明るい人達だ。
私の事をブッチさんは「イイナヅケちゃん」と呼び、キッドさんは「ハニー」と呼ぶ。
その度にお二人共、
「人の嫁を気安く勝手な名前で呼んでんじゃねえ、コノヤロウ!」
と『空神様』に怒鳴られていた。
そして、サン・ジェルミさん。
私達の間では『廃城組』と呼ばれている一人だ。
彼(彼女?)が此処にやって来ると『空神様』が紫電改で飛び立つ事になる。
だから私はサン・ジェルミさんの事が少しだけ苦手だった。
『廃城組』にはあの織田信長公が居るらしい。
それから私と同年代の女性も…。
ずっと会ってみたいと思っているけれど、まだその機会は訪れてはいない。