第12章 密か【イケメン幕末】
「近藤殿。」
二人で肩を並べて歩を進める間、私は近藤殿に問い掛ける。
「私も来月には十八に成ります。
まだ新撰組への入隊はお許し願えませんか?」
「そうか……隼多ももう十八に成るのか。
早いものだなぁ。」
また逸らかそうとしてみえる。
「近藤殿、私は本気です。
是非入隊をお許し戴きたい!」
真剣な声色でそう訴えてみても、近藤殿は何時も通り困った様な笑顔を浮かべるだけだった。
「そうは言ってもなぁ……隼多。
お前は歴とした御武家出身だ。
新撰組も会津藩御抱えとは言え、
所謂浪士隊の成り上がりであって………
其処に隼多の様な正しき出自の者が………」
「志は同じです!
私は近藤殿の元、皆と共に戦いたいのです。」
幾度も聞かされた曖昧な断り文句を遮って、また幾度も伝えた己の想いを告げる。
だけどまたしても近藤殿は溜め息を吐き、
「考えておくよ。」
と、穏やかな笑顔で私の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「それはそうと、隼多。
もう身体の調子は良いのか?」
「………え?」
「お前は毎月数日に渡って稽古を休むだろう。
隼多は年の割に体躯も小さく細い。
どこか悪い所があるんじゃないかと心配なんだ。」
「いえ………いいえ。
そんな事は………」
近藤殿からの指摘に、私の身体にはじっとりと汗が滲む。
その様を覚られてはならないと、私は必死に平静を装った。
「そうか?
それならば良いのだが。」
近藤殿はそれ以上追及する事は無く、私は密かに胸を撫で下ろす。
「どうせ今頃屯所では
総司が手薬煉引いて待っているぞ。
隼多は筋が良いと褒めていたからな。」
からからと愉快そうに笑う近藤殿の隣で、私の心は複雑に揺れていた。