第11章 狂った三日月夜【薄桜鬼】
総司を抱き終えて直ぐ、俺は部屋を出た。
自分の部屋へ戻る間に廊下から空を見上げてみれば、そこには雲一つ無い夜空に煌々と浮かぶ三日月。
まるで総司の様だと思った。
儚げで危うくて、触れると壊れて仕舞いそうだ。
だけどその研ぎ清まされた鋭さは強く美しい。
総司には何時までもそう在って欲しいと、その為に俺が出来る事為らば何でもしてやりてえと………
そう強く思った。
左之さんに抱かれて気だるい身体を引き摺りながら僕は障子戸を開ける。
そして目に飛び込んで来た大きな三日月に見とれた。
満月のように強くは無いけれど柔らかい光を注ぎ、分け隔て無く全ての物を優しく照らしてくれる。
だけどその鋭さには危険と脆さの両方を孕ませていた。
まるで左之さんみたいだな。
僕を完全に受け入れてくれる訳でも無いのに、完全に突き放す訳でも無い。
「本当……狡い人だなぁ。」
僕はそう一人ごちて、くすくすと笑った。