第11章 狂った三日月夜【薄桜鬼】
「…………ちゃんは?」
顔を上げないまま総司が問うて来る。
「眠ってる。
の事は心配するな。」
「それで?」
漸く顔を上げた総司の表情は怯えながらも必死に牙を剥く野良犬の様だ。
「それで左之さんは僕を斬りに来たの?」
「総司。」
「良いよ。斬ってよ!
左之さんに斬られるなら僕は本望だ。
さあ………」
止めてくれ、総司。
そんな顔はお前にはまるで似合わねえ。
お前はどんな時も孤高で気高くて……綺麗だった。
お前にそんな顔をさせているのが自分だと思うと本当に堪らねえ。
気が付けば俺は…………総司を抱き締めていた。
「………左之さん?」
俺の腕の中で総司が戸惑っているのが分かる。
「総司が俺とにした事……
許すとか許さないとかじゃねえ。
今はお前にそんな事をさせて仕舞った自分が許せねえんだ。
どうしてかは分からねえ。
を愛してる事も間違いねえ。
だけどよ……総司の事も放っておけねえよ。
………こんな俺を許してくれるか?」
上手く伝わるか自信は無かったけれど、俺は自分の思いの丈を正直に語った。
暫くの静寂の後、唐突に総司の失笑が響く。
「何なんだよ。
ちゃんも左之さんも………。
可笑しいよね。
どうして僕を責めないのさ。
本当、二人共………全く。」
総司は俺の腕の中から抜け出し、微笑みを湛えて俺をじっと見つめたまま言った。
「もう一度だけ………
これで最後だから、もう一度だけ……
左之さん、僕を抱いてくれる?」
ああ……こんな総司を見せられて拒める筈もねえ。
「……分かった。」
俺は総司に口付けるとその身体を押し倒し、今度は丁寧に、そしてきっちりと総司を抱いた。