第8章 横恋慕【イケメン幕末】
私は何て愚かだったんだろう。
もしかしたら近藤さんに自分の想いを受け止めて貰えるなんて…どうしてそんな図々しい事を思ってしまったんだろう。
ああ、もう消えてしまいたい。
今は一刻も早く四季に帰りたくて、溢れ続ける涙を手で拭いながら小走りで屯所を出ようとした私は誰かにぶつかってしまった。
「ごめ…なさい。」
顔を上げ慌てて謝ると、それは土方さんだった。
「おい……」
私の泣き顔を見た土方さんが不審気に眉を寄せる。
土方さんにまでこんな顔を見られたく無い。
私は何も言わずにその場を離れようとすると
「待てよ。」
土方さんは私の腕を掴んで引き寄せた。
「放して……
放っておいて…下さい。」
失礼なのは分かってるけど、とにかく此処から居なくなりたい。
それなのに私の腕を掴む土方さんの大きな手にはぐっと力が込められ、まるで怒っている様な声色で言われてしまった。
「そんな顔したお前を放っておける訳ねえだろうが。」
「ああ、総司。
を見なかったか?」
「さんですか?
もう帰ったみたいですよ。
さっき土方さんと一緒に出て行くのを見ましたから。」
「………としと一緒に?」
「ねえ、近藤さん。
本当に欲しい物はちゃんと欲しいって言わなきゃ駄目ですよ。
俺達の事ばかり考えていないで
近藤さんも少しは我儘を言って下さい。
俺はそんな近藤さんも見てみたいです。」