第7章 Phantom pain~幻肢痛~【薄桜鬼】
の表情は見えなかったが何故かは拒む様子も無く、それどころか俺に身体を委ねて来る。
「………………っ。」
その様を目の当たりにした男は「必ずまた迎えに来る」と捨て台詞を吐き、身を翻して駆け出して行った。
暗闇に溶け込むように男の姿が見えなくなってから、俺の腕の中に居るが独り言の様に呟く。
「夜が明けたら……
千景様も此処を出て行って下さい。」
「……俺が恐ろしいか?」
は直ぐ様、首を横に振った。
「千景様が何者なのか私には分かりません。
何故兄があれ程貴方を恐れたのかも。
只…………」
「只…何だ?」
「只……私は……
千景様を喰べてしまうかもしれない。」
嗚咽を堪える息遣い……
小刻みに震える肩……
が泣いている。
俺はを横抱きにして建物の中に戻ると、俺が寝ていた薄い布団の上にその身体を横たえ組み敷いた。
「千景様……?」
濡れた瞳で俺を見上げるの頬を撫でてやる。
「俺を喰いたいならば喰えば良い。
片腕位ならお前にくれてやっても惜しくは無い。
只、その前に……お前を俺に寄越せ。」