第5章 お前を全部俺に寄越せ【真・幕末新撰組】
土方さんの手が俺の髪を撫でているのを感じる。
俺は意識を取り戻したけれど、もう瞼を上げる事すら億劫だった。
だからその心地好さに身を委ね、眠った振りを続ける。
「総司……」
土方さんの甘い声が響く。
「お前は…俺だけだって言ったよな?」
これは独り言なのか?
俺に聞かせようとしてるのか?
俺には分からなかったけれど、このまま黙って聞いていたいと思った。
「じゃあ……
お前を全部俺に寄越せ。
俺から離れる事は許さねえ。
だから勝手に死ぬ事も許さねえからな。
……お前を死なせて良いのは俺だけだ。」
ドクンッと鼓動が跳ねる。
直ぐにでも飛び起きてあんたに抱き締めて欲しい。
だけど俺は身体が震えそうな程の歓喜を必死で抑え込み、まだ眠ったままを装った。
そんな俺の様子に気付いているのか、土方さんが笑った気配を感じる。
そして俺に寄り添う様に身体を横たえた土方さんの唇が俺の額に重なった。
「分かったな……総司。」
ああ……言われるまでも無く、俺の全部があんたの物だ。
あんたの方こそ、この先何が在っても俺を離すんじゃねえぞ。
土方さんの温もりと圧倒的な幸福感を全身で感じながら、俺は寝返りを打つ振りをしてその胸に顔を埋めた。
了