第5章 お前を全部俺に寄越せ【真・幕末新撰組】
土方さんが江戸から帰って来た。
ほぼ一月振りだ。
帰って来たのに………
どうして直ぐ俺の所に来ねえの?
俺がどれだけ会いたかったか、分かってねえのかな?
こんな風に想っていたのは俺だけなのか?
だったら今直ぐ部屋を飛び出して会いに行けば良いんだろうけど……
そうじゃないんだ。
あんたに来て欲しい。
あんたの方から俺を求めて欲しいんだ。
「総司…また身体の調子が悪いんだってな。
大丈夫か?」
土方さんが静かに襖を開けて部屋に入って来た。
俺は背中を向けて布団に入ったまま動かない。
……本当は嬉しくて堪らない癖に。
「……寝てるのか?」
その少し残念そうな声が固まっていた俺の心を少しだけ柔らげる。
「……漸く御出座しかよ。」
顔だけを振り向かせて睨み上げると、土方さんは目を細めて俺が寝ている布団の脇に腰を下ろした。
「仕方無えだろうが。
新人隊士の募集から帰って来たんだ。
先ずは近藤さんに報告するのが最優先だろ。」
「そんな事…分かってる…けどさ……」
あんたの口から聞きたいのはそんな言葉じゃない。
「何だ……拗ねてるのか?
ガキみてえだな。」
伸ばされた土方さんの手が俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「止めろよっ!
ガキ扱いすんな。」
「淋しかったのか?
俺に会いたくて堪らなかったか?
本当に可愛いクソガキだな、お前は。」
そう言って俺の頭を撫で続ける土方さんの笑顔に、もう俺は意地を張るのを止めた。