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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第4章 アナタ ト イキタイ【イケメン戦国】


「きっと俺は夢中でその戦いに身を投じるだろう。
 何しろ相手は織田信長だ。
 其処でこの命を散らせても何一つ悔いは無い。
 只……
 只、だけは死なせたく無いのだ。」

謙信様の視線がその腕の中で眠るさんに注がれる。

その慈愛に満ちた表情に、人を愛し、またその人に愛される事がこれ程までに心を豊かにするものなのかと俺は初めて知った。

それを教えてくれた謙信様とさんのお陰で、迷いで曇っていた俺の心が綺麗に晴れていく。

「俺亡き後、お前とが居た元の時代とやらに戻るも良し、
 二人で春日山城を出て何処かで静かに暮らすも良し、
 兎に角、を最期まで守ってやって欲しい。」

「ダメですよ。」

俺の言葉に謙信様はピクリと肩を揺らした。

「もう一度言ってみろ…佐助。」

ほら、そんな顔して俺を睨み付けても、最愛の女性を胸に抱いてその身を案じる謙信様なんて怖くないですから。

「そんなの絶対にダメです。
 だってそんな事になったら
 俺がさんに一生恨まれてしまうじゃないですか。
 俺は最後の最期まで、謙信様の傍に居ます。
 さんだって絶対に俺と同じ気持ちの筈だ。
 どこかに行けと言われても、
 もう俺とさんは謙信様から離れませんからね。」

呆れたような顔をして俺の話を聞いていた謙信様は、一瞬の後、酷く愉快そうに笑った。

「その言葉を忘れるなよ、佐助。
 もうもお前も、絶対に手離してやらん。」

俺とさんがこの時代に飛ばされて来たのは、この人と出会う為だったんだと……今なら信じられる。

これが『運命』ってやつなんだな。

俺にも降り掛かってきたこの『運命』に、今は感謝すらしてしまう。

そう、俺はもう………

今だに笑い続ける謙信様に向かって、俺もニッコリと微笑んで告げる。


「あなたと逝きたい。」



謙信エンド 了
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