第5章 海の時間
「入んないの?
せっかく海に来たのに」
「ここは安全なのか?
クラゲや津波の心配は?
安全管理は充分か?」
「あー、もう面倒くさい。
いいから入るよ!」
グイグイ腕を引っ張って中へ入って行く。
「あ、ちょ…」
「まだクラゲの季節じゃないし。
浅瀬に居りゃ問題ないっしょ」
「また君は…」
「細かいことはいーじゃん、どうでもさ。
お、浅野クン。
ちょっと見て見て」
「なんだ?」
「カニー」
足元に居たカニを拾いあげる。
「うっ…」
頬を強張らせてる。
ひょっとして…。
「苦手なの?」
その反応は。
「…好んで触るものではない」
「嫌いなんだ」
「そうとも言う」
「そうとしか言わないって。
可愛いー、ほらほら」
「や、めろ…僕に近づけるな」
「えー、なんで?
可愛いじゃん。
それともタコの方が好き?」
「どちらも嫌いだ!
あ…」
あーあー、ゲロッちゃった。