第5章 海の時間
「相変わらずのマイペースだな」
「褒めてんの?」
「そんな訳ないだろ」
海へ向かう途中、浅野クンが呟いた。
「だよねー。
浅野クンが人を褒めるなんてないからね。
てか人を褒めたこととかあんの?」
「…ない。
僕より優れた人には会ったことないからね」
「ふーん」
「何か言いたそうだな」
「べーつに?」
「ところでどうして海なんだ?
出かけるところなら他にもあるだろうに」
「いつもいつも家に行ける訳じゃないでしょ。
あのパパが急に帰って来たら困るじゃん」
「まぁ、君としては困るのか。
僕は別に気にはしないが」
「変なとこは気にしないよね」
「気にしても仕方ないからな。
海に誰か知り合いが居るとは考えなかったのか?」
「そんなこと言ったらどっこも出かけらんないじゃん。
人を隠すなら人の中、ってね」
「それもそうだな。
海ってここで良いのか?」
「そうだよ。
んで更衣室はあそこ」
「行くか」
「ん」