第1章 安心の時間
「掴めない奴だな、相変わらず」
「それはお互い様でしょ」
俺らは8割の口論と2割の甘さで出来てるようなモン。
「それもそうだな」
そこで話を切り上げると、浅野クンは机の上の参考書に向き直った。
相変わらずのガリ勉だなぁ。
2人で居る時まで勉強しなくたって良いのに。
真剣に机に向かう様子をつまらなそうに見つめると、なんとかペースを乱してやりたくなって口を開いた。
「浅野クンの部屋って殺風景だよね」
白い壁紙にかさばらない華奢な勉強机、本棚、ベッド、タンスがあるだけ。
必要最低限のものだけが揃えてあるだけで、それ以外の余分なものは何1つない。
良く言えば綺麗、悪く言えば生活感がない。
「最低限のものがあれば生活は出来る。
勉強や睡眠にも支障はない。
他に何が必要だと言うんだ?」
ムダのない生き方してるなぁ。
俺だったら耐えられない。
ケンカしたくなっちゃうだろうし。