第1章 第壱ノ獄.怨みの中で
鬼灯は麗紅を引き連れ、再び閻魔大王の元へと訪れた。
「麗紅さん、これから裁判を行いますので、しっかり見ていてくださいね」
「はい、わかりました」
鬼灯と閻魔大王は、いつも通りに裁判を進めていった。
その裁判内容を、麗紅は全て覚えていった。
記録課の獄卒が聞き逃した部分を、彼女がカバーすることもしばしばあった。
その後も、ずっと鬼灯の隣にいて地獄のことを学んでいく麗紅。
仕事は山積みで忙しく、気づけばその日の仕事は終了していた。
「お疲れ様です、麗紅さん。どうでしたか?地獄の仕事は」
「とても、楽しかったです。もっと、あの世のことを知りたいと思いました」
「そうですか、それは良いことです。仕事についてはこれから徐々に覚えていただきます。次は生活面でのことを教えましょう」
ついてきてください、という鬼灯の声で、麗紅は彼の自室に案内された。
「ここが私の部屋ですよ。今日から貴女の部屋でもあります。仕事が終わったらここに帰って来てくださいね」
「…はい」
「お茶を入れてきますので、適当に座ってていいですよ」
「はい」
麗紅は少し悩んだ後、極力邪魔にならない部屋の隅っこに正座をした。
それを見た鬼灯は少し驚き、麗紅に近づく。
「…どうしてそんなところにいるのですか?」
「…既にご迷惑をおかけしているのに…これ以上、邪魔にならないように、と…」
「…迷惑などではありませんよ。邪魔でもありませんから、椅子に座りなさい」
鬼灯は麗紅の手を取り、立たせると椅子に座らせる。
「…いいのですか?」
「いいんですよ。ここが貴女の家ですから」
「私の…家…帰る、場所…」
麗紅はキョロキョロと部屋の中を見渡す。不思議な物がたくさんあり、興味をそそられた。