第1章 第壱ノ獄.怨みの中で
少しして、鬼灯がお茶と和菓子を持ってきた。
「どうぞ」
「これはなんですか…?」
「これは和菓子です。甘くて美味しいですよ」
「甘い…?」
「甘い物は食べたことがありませんか?ではちょうどいいですね。食べてみてください」
「…いただきます」
麗紅は1口、和菓子を口に入れる。すると、甘くて優しい味が麗紅の口内で広がっていく。
麗紅は感動して目を輝かせる。
「美味しい…!」
「そうでしょう?これからは色々な物が食べられますよ。それだけじゃありません。生前出来なかったことも出来るようになる。貴女は、自由なんですよ」
「!!…自由…」
麗紅は鬼灯の言葉で、やっとあの生活から解放されたのだと実感した。そして、自然と涙が溢れていた。
静かに涙を流す麗紅を見た鬼灯は、なぜだか目を離さずにはいられなかった。
「…ぅ…ひっく…」
「…我慢はしない方がいいですよ。泣きたいなら泣いてしまいなさい」
泣くことを許してくれた鬼灯の前で、麗紅はさらに大粒の涙を流した。
鬼灯は、そんな麗紅をいつの間にか抱きしめていた。