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怨みの果てに【鬼灯の冷徹】

第1章 第壱ノ獄.怨みの中で


2人は閻魔殿の記録課へ向かうと、鬼灯はおもむろに1人の亡者を記録した巻物を取り出した。

「これ、5分以内で全て覚えてください」

「…わかりました」

鬼灯は5分測り始め、リコは巻物の内容を脳に詰め込んだ。
そして5分が経ち、鬼灯の声でリコは我に返った。

「ではリコさん。その亡者の死因と罪状はなんですか?」

「…死因は事故死。罪状は、自分より優れている人のことを認めず、妬み、陥れたことによる受苦無有数量処行きです」

「…ふむ、なかなかのものですね。合格です」

リコは首を傾げていると、鬼灯は拍手をした。

「おめでとうございます。貴女はこれから獄卒として、働いていただきます」

「!私を…雇ってくださるのですか?」

「はい。雇うといっても、生前のようにはしません。ちゃんと休憩も食事も、休暇もあります。もちろん給料も出ますよ」

「…私には恐れ多いことです…」

「そんなことはありませんよ。ただでさえ、地獄は人手不足なので正直有能な方かいると助かります」

「有能…私が…ですか…?」

鬼灯は揺るぎない表情で頷いた。

「貴女の記憶力は大したものです。躊躇いなく亡者を叩きのめすのも、最近の獄卒は生ぬるい。対して貴女は逸材です」

「…お褒めのお言葉…嬉しゅうございます」

「そのうち慣れていきます。わからないことがあれば聞いてください。しばらく貴女には私と共に行動してもらい、貴女の教育係を務めます」

「はい、わかりました。よろしくお願い致します」

リコは深々と頭を下げ顔を上げると、初めて微笑みを浮かべる。
その微笑みは見たものを魅了するような、不思議で綺麗な微笑みだった。
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