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怨みの果てに【鬼灯の冷徹】

第1章 第壱ノ獄.怨みの中で


リコの過去は、鬼灯と似たようなものだった。
物心ついた時から奴隷として朝から晩まで働かされ、時には眠ることも許されず、何かを失敗したり主人の癇に障ると小さく華奢な体に余るほどの暴力を受けていた。成長すれば、時に性的暴力も受けるようになった。
そして、鬼灯と出会ったあの日。リコは主人だった人間とその家族に、役立たずという理由で殴られ蹴られ、殺されたのだった。
人間の善行や悪行を記録する倶生神から報告された書物と、現世を映し出す浄玻璃の鏡でリコの過去を全て見た鬼灯と閻魔大王は、今の時代にもこんな事をする人間はいるのだと、改めて思い知った。

「酷い人間もいたもんだね…昔に比べたらずっと平和な時代になったはずなのに…」

「…そうですね。こんな人間がいるから、地獄をもっと厳しいものにしたくなるんですよ」

「まぁ、この人間達は死後、間違いなく裁判なしで地獄行きだろうね」

「あと、彼女のこれからの事ですが…当分は私が面倒を見ます。部屋も今は改装中で、どこも空きがありませんし。まずはこの地獄のことを知っていただかなくては」

「そうだね。鬼灯くんに任せるよ」

「はい。では、早速地獄を案内してきます」

「よろしくね」

閻魔大王は笑顔で鬼灯を見送り、仕事に戻る。
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