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怨みの果てに【鬼灯の冷徹】

第4章 第肆ノ獄.想い


100年間。彼にとってはほんの少しの時間だろう。
だが、この100年が長いと感じるほど、想いを秘めるのは苦労した。
自分にだけ向けてくれる美しい笑顔。夢を見てうなされる自分を包み込んでくれる華奢な腕。凍りついた心を溶かしてくれた体温。
初めて誰かを愛するということを教えてくれた人が、いつも傍にいるというのに…その想いは告げられなかった。
恐ろしい。愛する人に拒絶されてしまうのが。
怨みの心から生まれた鬼神は、愛情を知らなかったがために拒絶を恐れ、想いを秘めていた。
だが、彼にも限界が来た。拒絶されるのは怖いが、何よりも…自分の愛おしい人に、他の誰かが手を出すのが心底腹立たしかった。
そして意を決し、想いを告げた。

「私は…貴女をお慕いしております」

想いを告げられた麗紅は、瞳と同じくらい真っ赤に頬を染めていた。
そんな彼女を気にする余裕はないというように、鬼灯は溢れ出した想いを言葉に紡いでいく。

「ひと目見た、あの時から…私は貴女に惚れていた。貴女と過ごしたこの100年間…ずっと言えなかった…」

「……どうして…ですか…?」

「…私らしくないですが…貴女に…拒絶されるのが…恐ろしかった。ですが…今回の事件でわかりました。貴女に拒絶されるより、貴女が奪われる方が…腹立たしく、恐ろしい」

鬼灯は犯人を思い出したのか、般若のように顔を歪めた。

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