第2章 第弐の獄,ある日の事件
徹夜が続いた後の鬼灯の眠りは、いつも夢を見る。自分が人の子だった幼い頃の記憶を。
その夢を見た時の鬼灯は酷くうなされていて、麗紅は目を覚ます。そして静かに、優しく鬼灯を抱きしめる。まだ、鬼灯に何があったかは知らない麗紅。ただ、何か共感するものがあることは感じている。だからこそ何も聞かず、鬼灯に寄り添っている。鬼灯から話してくれるまで、隣で鬼灯を支え続けるのだ。
そして今日も、鬼灯は夢にうなされて夜中に目を覚ます。
「はぁっ…はぁ…」
またこの夢か…と思いながら汗を拭う。落ち着きを取り戻すと、うなされていた鬼灯を抱きしめたまま眠る麗紅を見つめ、腰まである美しい黒髪を梳く。
(…麗紅さん…私は貴女が…)
鬼灯は心の中で麗紅への想いを呟く。だが、何千年も生きてきて恋愛をするのは初めてで、どうすればいいかわからなかった。
そして何より、拒絶されるのが嫌だった。
冷徹で、恋に臆病な鬼神には、どうすることも出来なかった。
今はただ、麗紅が傍にいればそれでいいと思っていた。
だが、その関係は崩れ始めていった…。