第2章 第弐の獄,ある日の事件
あれから100年。麗紅が知っている現世とは変わり、視察に行くたびに目を輝かせる。
地獄は相も変わらず忙しく、鬼灯も仕事漬けになっていた。
(今日で三徹目…最近は亡者の数がさらに増えて仕事が山積みに…)
無我の境地に入り込んだ鬼灯に、麗紅は砂糖を入れたコーヒーを持ってきた。
「鬼灯様、少し休憩なされてはどうですか?お身体を崩されてしまいますよ」
「…いえ…大丈夫です。ここまで来るといっそ脳が冴えてきますし…」
「…あの、鬼灯様。今日は部屋に帰れそうですか?」
「えぇ、この仕事が終われば…」
「わかりました。もうひと仕事、頑張りましょう」
麗紅もまた徹夜を繰り返す身でありながら、鬼灯に温かい笑みを浮かべる。その笑顔に、鬼灯は救われるのだった。
なんとか仕事を終えた鬼灯と麗紅は、3日ぶりに部屋に帰ってきた。
「鬼灯様、寝ましょう?」
「そうですね…さすがに三徹は堪えます」
「もう…またそんな無理をして…もっと、私を頼って下さい…」
心配そうな表情で鬼灯の目元に触れる麗紅。彼を労る姿は本当に慕っている。
「すみません…麗紅さん…充分…助かって、いますよ…」
「ふふ…それなら、よかったです…おやすみなさい…鬼灯、様…」
「おやすみ…なさい…」
疲れ果てた2人はいつものように抱きしめ合い、眠りにつくのだった。