第1章 第壱ノ獄.怨みの中で
「なんだお前!危ないじゃないか!」
「貴方がたが彼女にしてきた行為は、間違いなく地獄へ行くには充分過ぎるほどです。彼女が鬼になった理由を聞きますか?」
「なんだって言うんだよ」
「…麗紅さん。はっきり言って差し上げなさい。そして、貴女自身がトラウマを乗り越えるんです」
「乗り越える…」
麗紅は目を閉じて胸に手を当て、深呼吸をして、再び目を開けた。
その瞳は覚悟を決めたように、強く輝いていた。
「…私が鬼になった理由は、貴方がたに復讐をするため…私のこの手で…貴方がたに制裁を加えるため…!」
「な、何を言って…」
「もう…私を蝕むものは…何も無い…!」
麗紅は鬼灯の金棒を手に取り、トラウマの対象に向かってフルスイングした。それは勢いよく対象を捉え、見事なホームランを決めた。
他の暴れていた亡者達は立ち止まり、震え上がっている。炎のように湧き上がる怒りと怨みの感情とは裏腹に、麗紅の表情と脳内はとても冷ややかだった。
「ひ、や、やめてくれ…ちゃんと罪を償うから…!!」
「貴方がたの口は嘘しか吐かない…そんな口は、呵責しなくては…ねっ!」
グシャッ!と骨が砕ける音と共に、亡者の頭は次々と潰されていった。もう、誰にも麗紅を止められなかった。唯一止められるであろう鬼灯は、復讐に燃える麗紅をただ見つめていた。
ーーなんて、美しいのだと感じながらーーー