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怨みの果てに【鬼灯の冷徹】

第1章 第壱ノ獄.怨みの中で


麗紅の気が落ち着く頃には、閻魔殿は亡者の血の海と化していた。
麗紅はその血の海の中、静かに佇んでいた。
そんな麗紅に声をかけられるのは、同じように怨みを持っている鬼灯しかいなかった。

「…気は済みましたか?」

「…はい…もう…大丈夫です」

「それはよかったです。あぁ、血がついていますよ」

鬼灯はハンカチを取り出し、麗紅の頬についた返り血を拭き取る。

「…ありがとうございます…不思議ですね…あれだけ血を浴びたのに、着物は汚れていない…」

「この着物は獄卒用につくられたそうで…血を浴びると着物が吸い取って、彼岸花がより綺麗になるそうですよ」

「便利ですね…でも、よかった…鬼灯様に買っていただいた大切な着物…汚さなくて済みました」

そう言って微笑む麗紅は、純粋で真っ直ぐな、美しい心を持っていた。ただし、純粋過ぎるが故に、奈落の底へと堕ちた黒い心だった。

(それでいい…この地獄では、とても良い心を持っている。だからこんなにも惹かれるのかもしれませんね…)

鬼灯は麗紅の頬に手を添え、彼女を見つめる。

「鬼灯様…?」

「…部屋に戻りましょう。後は他の方に任せればいいです」

「…はい」

2人は閻魔殿の奥へと消えていった。
それを見届けた閻魔大王は呟いた。

「…第2の鬼灯くん…女体化して誕生しちゃったかも…」







その日から、麗紅は吹っ切れたように生き生きとしていた。地獄での生活にも慣れ、能力の高さを評価され、鬼灯の補佐をする第二補佐官として、新たな生を歩み始めた。
忌々しい過去の記憶、トラウマはまだ拭えない。彼女の中に根強く残るそれは、彼女の気が済むまで地獄にいる元主人たちを苦しめ続ける。
これから続く何千年もの間、2人の鬼神は常闇の怨みの中を歩いていく。
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