第1章 第壱ノ獄.怨みの中で
そんなことを考えていると、麗紅は試着室から出てくる。
「鬼灯様…どうですか…?」
「とても、よく似合っていますよ」
「ぱぁ…ありがとうございます…///」
照れたように微笑む麗紅に、鬼灯はさっき見つけた着物を見せる。
麗紅は気に入ったようで、それも買うことにした。
それから帯や飾り、下駄も買い揃え、着物屋を後にするのだった。
「すみません、こんなにお高いものを買っていただいてしまって…」
「いいんですよ。私用でお金を使うことはあまりありませんし、喜んでいただけてよかったです」
「…ありがとうございます…鬼灯様」
麗紅は鬼灯の隣を歩き、慣れない着物で歩く速度が落ちてしまっている自分に合わせてくれる彼の優しさに、嬉しそうに微笑むのだった。
「…さて…次は下着屋ですか…私は入れませんので、お好みのものを買ってきてください」
「はい。すぐに戻りますね」
そう言って、麗紅は下着屋へと入っていく。鬼灯はしばらく暇つぶしに、髪飾りを見ていた。時折、女性の店員に話しかけられたりもした。
「お兄さん、彼女さんにプレゼントでもどうです?喜ばれますよ。この紅い簪なんか特にオススメです!彼岸花みたいで綺麗でしょう?」
「紅い…ふむ…じゃあ、これひとつ」
「ありがとうございます♪」
(麗紅さん…喜びますかね…)
常闇の鬼神は、まるで今まで失っていた生気を取り戻したかのように、麗紅のことを考える度に生き生きとしていることに気づく。
だが、それが何故なのか、彼はまだ気づかない。