第1章 第壱ノ獄.怨みの中で
「…ありがとうございます」
「!!麗紅ちゃん…綺麗な笑みだね。この後僕の家に」
「行かせるわけないだろこの偶蹄類」
ギロリと白澤を睨む鬼灯。麗紅は後ろを向いているので状況が理解出来ない。
そしてまた、2人の言い争いが聞こえる。
「お前にゃ関係ないだろこの朴念仁!」
「うるさい白豚!」
「つーかなんで彼女がお前の着流し着てんだよ!!」
「彼女の着物がないんですよ!今日来たばかりなんだから当たり前でしょうが!」
「はぁ!?僕だったら仕事すっぽかしてでも買いに行くね!!」
「お前と違ってこっちは忙しいんだこの極楽蜻蛉!!」
「んだとこの野郎!」
2人が言い争っていると、麗紅の身体が小刻みに震えていることに気づく。
「麗紅ちゃん?ごめんね、怖がらせちゃった?」
「ビクッ!い、いえ…大丈夫です…」
「すみません、こいつと話すとイライラしてしまうものでつい。いつものことですから、お気になさらず」
「はい…」
「お前のせいで麗紅ちゃんの治療中断しちゃったじゃんか…麗紅ちゃん、包帯巻くから、胸を隠しておいてくれるかな?」
「はい」
麗紅は手で胸を隠し、包帯を巻かれていく。
「それにしても、下着もないのは可哀想だね」
「だから明日買いに行くんですよ」
「ならいい店があるからそこ行きなよ。どうせお前、女の子の好みとかわかんないだろ」
「…貴方に言われると気に食わないが否定はしません」
「素直じゃないなぁ…麗紅ちゃん、終わったよ」
「ありがとうございます」
麗紅は着流しを着て2人に向き直る。白澤は鬼灯にその店の名前と場所が書いてあるメモを渡した。
「じゃ、僕はこれで。麗紅ちゃん、またね」
「はい、白澤様」
白澤は天国へ帰って行き、鬼灯と麗紅も部屋へと帰って行った。