第1章 第壱ノ獄.怨みの中で
半ば強制的に医務室へと連れてこられた麗紅は、鬼灯に手当てをされる。本来なら医務室には医者がいるが、今は不在だったからだ。
「さて…怪我を見せてください」
「……スルッ…」
着流しをまくり、足を見せる。そこには数え切れない程の痣と傷があった。
「…少し沁みますよ」
「はい…」
鬼灯は消毒をしていく。麗紅は沁みて痛いのを必死に我慢する。
「っ…ぃ…」
「もう少し我慢してください」
「っ…は、ぃっ…」
「……終わりましたよ」
「っ…ありがとう…ございます…」
麗紅は痛みで涙目になっていた。
「…あとは腕だけですか?」
「…いえ…背中も…です…」
「背中ですか…では、後ろを向いて上だけ脱いでください」
「はい…」
麗紅は鬼灯の言う通りに後ろを向いて着流しをはだけさせた。背中には大きな、ナイフで切られたような切り傷があった。
「…これは…ぱっくりいってますね。どうして黙っていたのですか?」
「…ご迷惑を、おかけしてはいけないと思いまして…」
「これからはそんなこと気にしなくていいです。何かあればすぐに言いなさい」
「…はい、すみません…」
「この怪我は専門の奴に診てもらった方がいいですね」
「専門…ですか…?」
「はい。あいつに会わせるのは嫌な予感しかしませんが…仕方ありません。今から呼びますので、待っていてください。着流しは一旦着ていいですよ」
「はい」
鬼灯はある人物に電話をかけた。