第1章 第壱ノ獄.怨みの中で
「ぅ、ふわぁぁん…っ」
麗紅は温かいぬくもりに初めて包まれて、徐々に落ち着きを取り戻していく。
「ぐすっ…すみません、鬼灯様…着流しが…」
鬼灯に抱きついて泣きじゃくっていたため、着流しがびしょ濡れだった。
鬼灯は気にした様子もなく、平然としている。
「気にしなくていいですよ。洗えば済むことです」
「…はい」
「そうだ、貴女の着物も買わないといけませんね。いつまでもそのボロボロな服でいるわけにはいきませんし」
「で、でも、鬼灯様のお金を使っていただくわけには…」
「いいんですよ。これから働いていただくわけですし、労力で返していただければ」
「…わかりました…」
「明日は休暇を取ってありますから、買い物に行きましょう」
「はい」
「さて、そろそろ風呂に行きましょうか。とりあえず着替えは私の着流しを着てください。大分デカイとは思いますが、ないよりはマシでしょう」
「ありがとうございます」
2人で風呂に向かう途中、衆合地獄の主任補佐であるお香に出くわした。
「あら、鬼灯様。そちらのお嬢さんはどなた?」
「人と鬼火のミックスで鬼になった麗紅さんです。今日から私が教育係になりました」
「あら、そうなの。私はお香、よろしくね」
優しい微笑みを浮かべるお香に、麗紅は少しだけ警戒心を解いてお辞儀をする。
「麗紅です…よろしくお願い致します」
「貴女もお風呂に入るの?一緒に入りましょ♪使い勝手がわからないでしょうし、教えてあげるわ」
「ありがとうございます」
「では麗紅さん、風呂から出たらここに居てくださいね」
「はい、鬼灯様」
「さぁ、行きましょ♪」
麗紅はお香に連れられて風呂に入る。