第6章 自由な日々
「最近徹、優しくなったんだよ。」
「シュリ、余計なこと言うんじゃねえよ。」
「なに照れてるの。」
幸せそうな二人を見て安心した。
紫音を見ると、あたしと同じ気持ちなのか小さく頷いた。
「七瀬と紫音先輩はどうなの?」
シュリが興味津々な様子で聞いてきた。
「どうって…普通?だよね?」
紫音に聞くと、そうだねと言って頷いた。
「七瀬と紫音先輩ならケンカとかも無さそうだもんね。」
その言葉で一瞬心臓が跳ねた。
あたしの誕生日の時のことを思い出したのだ。
あの話は二人には知られたくない。
横目で紫音を見ると、ニッコリと笑った。
「そうだね。特に何もないよ。」
あたしの気持ちを汲み取ってくれたのか、紫音はそう答えた。
「私と徹なんかくだらないことですぐケンカになっちゃうよ。そういえば聞いてよ七瀬!バレンタインデーの時にさ、私が病院にいるからチョコ渡せない。ごめんねって言ったら徹、チョコなんかいらねえよって言ったんだよ!?」
シュリは怒っているが、それは徹なりの優しさなのではないかと思った。
「俺、甘いもの好きじゃねえし。」
徹は素っ気なくそう返した。
「それにしたってもう少し言い方ってものがあるじゃん。」
むくれるシュリが可愛くて、思わず笑ってしまった。
「あんた達さぁ、本当に仲良いよね。結婚式ちゃんと呼びなさいよ!」
そう言うと、シュリは顔を赤くした。
「徹、結婚式してくれるの?」
三人の視線が徹に向けられ、徹は気まずそうな顔をした。
「あんたまさか、籍入れるだけでいいとか思ってないわよね?」
図星なのか、徹はあたしから視線をそらした。
「羽山君、シュリにウェディングドレス着せてあげなよ?一生に一度のことなんだからさ。」
紫音が更に追い詰めるようにそう付け加えた。
シュリは期待の眼差しを徹に向けている。
「わ…わかったよ。お前の好きなようにしろよ。」
徹の投げやりな言葉に紫音が溜め息をついた。