第11章 繋いだ手
翌日、飛行機に乗るとやっと両親から解放された気がして急に体の力が抜けた。
隣に座る、愛しい彼を見つめる。
視線を感じたのか、彼も私を見て微笑んだ。
「紫音、今までありがとう。」
出会ってから今までの感謝の気持ちをこの一言に込めた。
伝えきれない程の想いも、紫音ならたった一言で分かってくれると思うから。
「なんだか、今までありがとうなんて言われたら別れの挨拶みたいで嫌だなぁ。」
笑って頷いてくれると思っていたら、予想外の反応をされて焦った。
「え?いや、そうじゃなくて…っ!」
「冗談だよ、わかってる。これからもよろしくね、七瀬。」
からかわれたのだと分かると、一気に顔が熱くなった。
一瞬でも本気で焦った自分が恥ずかしい。
「こ、こちらこそ。これからもよろしく。」
恥ずかしくて若干うつ向くと、紫音はあたしの顔を覗き込んだ。
「七瀬。」
「な、なに?」
「愛してるよ。」
あたしにしか聞こえないくらい小さな声で、でもハッキリとそう言われ、嬉しさと幸せな気持ちでいっぱいになった。
「あたしも愛してるよ。」
飛行機の中だから、必死に涙を堪えた。
勿論これは嬉しい涙だ。
紫音は満足げな笑みを浮かべた後、何かを思い出した様に手を叩いた。
「あ、そういえばね。昨日羽山君から電話がきて。」
「え?徹から?」
何故徹が紫音に電話をしたのか疑問に思ったが、紫音の次の一言でその疑問はどうでもよくなった。
「シュリが妊娠したって。」
「え…うそー!!」
驚きと喜びのあまりつい大きな声を出してしまい、紫音がクスクスと笑いながらあたしの唇に人差し指を当てた。
「しー。七瀬、声が大きいよ。」
「ご、ごめん…でも、ホントに?」
「うん。本当に。」
自分のことの様に嬉しくて頬が緩んだ。
シュリと徹の子ども…抱っこしたかったな。
そんなことを考えていると、ふいに紫音が手を繋いできた。
「俺達も二人に負けないくらい幸せな家庭築こうね。」
「うん…!」
あたしは久しぶりに心から笑い、そして繋いだ手をぎゅっと握った。
"一緒にいたい"
たった一つの願いは
"ずっと一緒にいよう"
永遠の誓いに変わった。
END.