第6章 自由な日々
とりあえず、落ち着こう。
そう思って適当に近くのカフェに入った。
コーヒーを飲みながら、気持ちを整理した。
あたしは何故あんなに腹が立ち、苛立ったのだろう。
あの友達の発言、それに対して言い返さなかった紫音。
それだけではない。
紫音が、あたしではなく元カノを庇ったから…?
そう思うと納得し、同時に自分が凄く最低な女に思えた。
あたしは花音さんを理由に、醜い感情を紫音にぶつけただけだ。
「…あたし、ホント最低だわ。」
落ち着いて考えれば、紫音は元カノを庇った訳ではなくてあの場を穏便に済ませようとしただけで、あたしが勝手に庇ったと思っただけかもしれない。
罪悪感で心が押し潰されそうになった。
その時、スマートフォンが鳴った。
画面を見ると紫音からの着信だった。
「…はい。」
「七瀬、どこにいるの?この辺変な奴も多いから外にいるならカフェかどこかに入って。すぐに行くから。」
紫音はこんな時まであたしの心配をしていた。
あたしが悪いのに。
「ごめん。心配かけて…さっきの道真っ直ぐ行った所の、赤い看板のカフェにいるから…。」
「良かった…。」
紫音は心の底から安心した声で呟いた。
「すぐに行くからね。待ってて。」
「わかった…。」
電話を切った数分後、紫音がカフェに入ってきた。
あたしを見つけると安心した様に笑った。
紫音はあたしの正面に座り、注文を取りに来た店員にコーヒーを頼んであたしと向き合った。
「良かったよ。カフェにいてくれて。柄の悪そうなのが結構いたから…やっぱり都会は怖いね。」
紫音が気を使って冗談混じりにそう言ったのが分かったが、今はその優しさが逆に痛かった。
「ごめん紫音…ホントにごめん。あたし最低だよね…。」
「どうして?そんなことないよ。」
「最低だよっ…あたし、紫音が元カノを庇った時、嫉妬したんだと思う。それに苛ついて花音さんのこと理由にして紫音に八つ当たりして…あたしが一番最低だよ。」
そう言うと、紫音は目を丸くした。