第6章 自由な日々
「七瀬、嫌な思いさせてごめんね。」
重い沈黙を破ったのは紫音だった。
「いや…なんか、頭にきちゃってさ。元カノにじゃなくてね。あの友達に。」
「まぁ、そう思う人もいるよ。仕方ないよね。」
紫音のその言葉で抑えていた怒りが爆発した。
「仕方ないって何?」
「詳しい事情を知らない人ならそう思う人もいるってことだよ。」
「そうかもしれないけど…あんな言い方されて紫音はムカつかないの?」
「俺だっていい気はしないよ。でも…。」
「花音さんのことあんな風に言われたのに元カノ庇う様な態度取ってさ。」
「別に庇った訳じゃ…。」
「紫音がそんな奴だと思わなかったよ。」
花音さんの事をあんな風に言われて、何も言い返さなかった紫音にも腹が立った。
だけど、この苛立ちはそれだけが理由ではない気がした。
それが何なのか分からなくて、とにかく今は一人になって落ち着いて考えたかった。
紫音に腕を掴まれたがその手を振り払い、人混みを掻き分けて一人で先を歩いた。
紫音は追いかけてきたがいつの間にか距離は広がり、我に返って振り向いた時にはもう、紫音の姿は見えなかった。