第6章 自由な日々
その女性は、あたし達と同じくらいの年齢の背が低くて可愛らしい顔をした人だった。
同じテーブルに友達らしき女性が二人いる。
「…澪(ミオ)?」
女性と紫音はお互いを見て驚いている。
「紫音、久しぶりだね!一緒にいる人、彼女さん…?」
「うん。そうだよ。」
「そっか…紫音、彼女さんの前で言うのもなんだけど…あの時はごめんね。私ずっと謝りたくて…。」
訳が分からずに、黙って二人のやり取りを見ていた。
「いいよ。俺も悪かったから。」
「…綺麗な彼女さんだね。」
澪さんがあたしを見て言った。
何故か気まずい雰囲気になり、澪さんの友達が立ち上がった。
「澪、行こう。こいつでしょ?変なお姉さんがいる元彼って。」
その言葉であたしは二人の関係を察した。
しかしそれよりも、澪さんの友達が言った言葉が聞き捨てならなかった。
「ちょっと。変なお姉さんって何よ。」
あたしは思わず突っかかってしまった。
「すみません。」
何故か澪さんが謝った。
「何で貴女が謝るんですか?」
「七瀬、やめて。」
紫音が澪さんを庇う様にそう言った。
「紫音、ごめんね。幸せになってね。バイバイ…行こう。」
澪さんは友達を連れて逃げる様にその場から去った。
「元カノ?」
「うん…高校生の時に少し付き合ってたんだ。」
「花音さんのこと知ってるんだ?」
「うん…一度花音に会わせたら、理解できないって言われちゃって。お互いにまだ高校生だったからね。俺もつい怒っちゃって…。」
「あー…それで別れた感じ?」
「うん。」
別に紫音に元カノがいてもおかしくない。
偶然会ってしまっただけだし、責めるつもりもない。
しかし、紫音が彼女を庇う様な態度を取ったのがショックだった。
花音さんを変なお姉さんなんて言われたのに。
その後、気まずい雰囲気のままあたし達は一言も言葉も交わさずに水族館を出た。