第6章 自由な日々
街中はカップルで溢れかえっていた。
今日はバレンタインデー。
しかも日曜日。
当然といえば当然だ。
それに、あたし達もその中の一組だ。
イルミネーションの点灯は午後5時から。
それまで何をするか打ち合わせしていなかった。
ふと、駅の壁に貼ってある水族館のポスターが目に入った。
「紫音、5時まで時間あるし水族館行こうよ!」
「うん、いいよ。」
地元からあまり出た事が無いあたしは、水族館に行くのは初めてだった。
「あたし水族館行くの初めてなんだ。紫音は行ったことある?」
「うん。昔ね。」
この水族館に行く事にしたのが、後々ちょっとした事件を巻き起こす事になる。
皆、考える事は同じなのか、水族館の中は混んでいた。
「混んでるねー。」
ゆっくりと周りに合わせながら歩いて見て回った。
女性は皆、背伸びをしながら水槽を見ている。
こういう時、背が高いと便利だ。
水槽の中では様々な魚が泳いでいる。
特に、青い照明に照らされた小さな魚の群れが綺麗だった。
「花音さんにも見せたかったね。」
「七瀬はいつも花音のこと考えてくれてるんだね。」
「なんかね、無意識に頭に浮かんじゃってさ。」
一通り見て回り、休憩スペースで少し休む事にした。
休憩スペースも混んでいたが、一ヶ所だけ空いているテーブルがあった。
「紫音!?」
そこに座ろうとした時、いきなり隣のテーブルに座る女性が紫音を見て声を上げた。