第6章 自由な日々
「七瀬、何で怒ってるの?」
「え?怒ってないよ?何で?」
「いや…今の笑顔、凄く怖かったよ。」
紫音にそう言われて、無意識に苛立ちが顔に出てしまったのだと気付いた。
大人気ない自分が少し恥ずかしかった。
「あのさ、紫音てモテるでしょ?」
「え?いや、そんなことないよ。顔が顔だからたまにからかわれる事はあったけど。」
「ふーん。今みたいな事、よくあるの?」
「今みたいな事?」
「いや、何でもないよ。」
以前、自分の本当の気持ちに気付かないシュリの事を鈍いと紫音は言っていたが、紫音も自分の事になると鈍いと思う。
他人の事になると怖いくらい鋭いくせに。
そして、嫉妬している自分が嫌だった。
今まで嫉妬なんてした事が無かったから、余計に。
「あー、やだやだ。あたしらしくない。」
口に出して言う事で、嫉妬を振り払った。
そんなあたしを見て、紫音は不思議そうな顔をした。
目的地の最寄り駅に着き、あたし達は電車を降りた。