第6章 自由な日々
明日は2月14日。
あたしの19歳の誕生日だ。
そしてバレンタインデーでもある。
明日は紫音と会う予定だ。
少しずつ両親に気を許し始めていたあたしは、母に言った。
「お母さん、明日バレンタインデーだからチョコ作りたいんだけど…キッチン使ってもいい?」
元彼には毎年買ったチョコレートを渡していた。
だけど、紫音には手作りを渡したかった。
「いいわよ。でも貴女、チョコなんて作れるの?」
「一応、本買ったし…。」
「上手くやらないと固いチョコになるから、気を付けなさい。」
母らしからぬ発言に驚いた。
いや、これが普通の母親なのかもしれないが。
「わ、わかった。」
「別所君に渡すの?」
「う、うん。」
「そう。」
母は買い物に出て行き、あたしはチョコレート作りを始めた。
初めて作るから、そんなに凝った物は作れない。
それでも精一杯頑張って作った。
ラッピングまで終わると、緊張してきた。
一応、味見はした。
まぁまぁの出来だと思う。
ラッピングはおかしくないだろうか。
あたしはもう一つ、チョコレートを作った。
花音さんに渡す分だ。
明日は運良く日曜日で学校は休み。
一日出かけられるから、紫音と都内にイルミネーションを見に行く予定だ。
花音さんを一日一人にするのが心配だと紫音に言うと、紫音のお母さんがわざわざあたし達のために休みを取ってくれたらしい。
「いつも花音を任せちゃってるから、誕生日くらいは二人きりで過ごしなさいって母さんが言ってくれたんだ。」
紫音からその言葉を聞いた時は、有り難さと嬉しさで胸がいっぱいになった。