第6章 自由な日々
家に帰るとトイレから出てきた父と鉢合わせた。
「あ…ただいま。」
やましいことはないが、少し気まずかった。
「おかえり。」
父はそれだけ言うとリビングに入った。
どうやら今日は機嫌が悪くないようだ。
父に続いてリビングに入ると、母があたしを見た。
「おかえり、七瀬。」
「ただいま。」
何故か分からないが、今日は少し家庭内の雰囲気が違った。
いつもの様な重い空気を感じない。
自分の部屋に入ろうとすると、父に声をかけられた。
「七瀬。」
「なに?」
「シュリちゃん…だったか?春休みに入ったらお見舞いに行っていいぞ。」
「え?」
まさか父からこの話題を振ってくると思わず、驚いてしまった。
「いいの?」
「その子、白血病なんだろう?会えないまま亡くなったりしたらお前も後悔するだろう。」
縁起でもないことを言わないでほしかったが、そこは堪えた。
「…ありがとう、お父さん。」
それだけ言って自分の部屋に入った。