第6章 自由な日々
「私、これ食べてみたいの。新しくできたお店みたいなのよ。」
それは釜飯屋のメニューだった。
「へぇ、釜飯屋さんなんてできたんだ。」
寿司やピザの宅配はよくあるが、釜飯屋の宅配があるなんて初めて知った。
「これでいい?」
紫音に聞かれて、あたしはいいよと答えた。
それぞれ注文する物を選び、紫音が電話で頼んでくれた。
「釜飯っておいしいのかしら…楽しみ。」
「日本に来てだいぶ経つけど、釜飯は初めて食べるね。」
どうやら二人は釜飯を食べたことがないらしい。
30分くらい経ち、釜飯が届いた。
テーブルに並ぶ釜飯に、花音さんは興味津々だ。
「凄いわねぇ。二人のもおいしそうね。」
「みんなで分けて食べる?」
そう言うと、花音さんは嬉しそうに頷いた。
お茶碗に少しずつ取り分けてみんなで食べた。
花音さんはおいしいおいしいと言いながら、終始笑顔で食べていた。
紫音の口にも合ったらしく、おいしいね、と言っていた。
今まで何度もこうして三人で食卓を囲んできたが、本当に家族になった気分になり、二人がおいしそうに食べる姿を見ると幸せな気持ちになった。
「幸せだね。」
あたしがそう言うと、二人は同時に頷いた。
あたしにとって紫音と花音さんは、両親よりも家族に近い存在だ。
紫音と結婚して、いつかは子どもも生まれて、もっと賑やかで楽しくなるんだろうな。
たまに、シュリと徹と二人の子どもも交えてみんなで出かけたりできたら凄く楽しいだろう。
辛い冬休みから解放されたのもあり、今が余計に幸せに感じて泣きそうになった。