第6章 自由な日々
「ありがとね、紫音。あたし達のために頑張ってくれて。」
穏やかな顔で眠る紫音に向かってそう言った。
自分はバイトができないのがもどかしかった。
二人で働けば、紫音の負担も少なくなるのに。
「七瀬ちゃん、続き頑張りましょう?」
「そうだね、頑張ろう。」
あたしと花音さんはひたすら鶴を折り続けた。
午後7時、紫音が目を覚ました。
「ごめん、いつの間にか寝ちゃった…。」
紫音は申し訳なさそうにあたしと花音さんを見た。
「いいのよ、紫音。」
花音さんが優しく微笑んだ。
「紫音、学校もあるんだしあまり無理してバイトしなくていいからね?」
あたしがそう言うと、紫音はニッコリと笑った。
「大丈夫だよ。」
紫音が引っ越しの費用を貯めるために頑張って働いてくれているのは分かっている。
しかし紫音はこれから就職活動も始まる。
あまり無理をしないでほしかった。
「ごめんね、紫音にだけ任せちゃって…あたしさ、親にバイトしていいかもう一回聞いてみるよ。せめて短期のバイトでも…。」
「七瀬はバイトしなくていいの。」
口には出さないが、あたしの親の機嫌を損ねたら何をされるか分からないと心配してくれているのだろう。
「うん…わかった。」
「千羽鶴、だいぶ進んだね。」
紫音が話題を変える様に明るい口調で言った。
花音さんが誇らしげな顔をした。
「七瀬ちゃんと頑張ったのよ。あと500羽くらいかしら…。」
折った鶴を入れてある段ボール箱を見ながら花音さんが言った。
「もう半分まで進んだんだ、凄いね。」
「でもそろそろお腹空いたわ…。」
花音さんのお腹が鳴り、あたしと紫音は笑ってしまった。
「今日は何かとろうか。二人とも何が食べたい?」
「あたしは何でもいいけど…。」
そう言うと、花音さんが何かを思い立った様にテレビ台の下の引き出しから一枚の宅配のメニューを取り出した。