第6章 自由な日々
冬休みが明けて、大学の校門前で紫音は人目も気にせずにあたしを抱きしめた。
「久しぶり、七瀬。会いたかったよ。」
「あたしも会いたかったよ。」
あたしは一つ、紫音に話さなければいけない事があった。
「あのさ、紫音。これからはその…家の前まで送ってくれなくて大丈夫だから。」
紫音は何かを察してくれたのか、深く追及せずに分かった、と頷いてくれた。
その日、久しぶりに紫音の家に行った。
「七瀬ちゃん!久しぶりね!!」
花音さんが玄関に来て、あたしを抱きしめた。
「妖精さん、久しぶり。」
「長い間外に出たらいけない風邪にかかっちゃったんでしょう?もう大丈夫なの?」
紫音に視線を送ると、小さく頷いた。
どうやら花音さんにはそう説明したようだ。
あれだけ来ていたのに急に来なくなったのだ、花音さんも不思議に思ったのだろう。
「うん、もう大丈夫だよ。心配かけてごめんね?」
「いいのよ、元気になって良かったわ。千羽鶴折ってたんだけど、間に合わなくて…。」
本当に優しい人だ。
せっかく折ってくれた鶴、無駄にしたくないな。
そう考えた時、あたしはある事を思い付いた。
「あのね、妖精さん。あたしの友達があたしよりも長い間外に出れない風邪にかかっちゃったんだ。だから、あたしも一緒に折るからその千羽鶴、その友達に渡してもいいかな?」
「もしかしてそのお友達って、紫音が前に連れてきた後輩さんかしら?」
以前徹と揉めた時に怪我をして、紫音の家で手当てをしてもらったとシュリから聞いていた。
「そう、その子…シュリって言うんだけどね。いいかな?」
「もちろんよ。シュリちゃんが早く良くなるように、みんなで折りましょう?紫音も手伝ってくれる?」
「うん、勿論。」
紫音はニッコリと笑って頷いた。
その日は三人でリビングで鶴を折った。
「結構大変だねー。」
体が凝って伸びをしながら紫音を見ると、紫音はソファーに寄りかかって眠っていた。
「七瀬ちゃん、寝かせてあげて?最近紫音、いっぱい働いてるから疲れてると思うの。」
確かに紫音は最近、バイトを増やした。
そんなに無理してお金を貯めなくてもいいのに。
あたしは自分のコートを紫音にそっとかけた。