第5章 母の裏切り
「徹、あんたついに男にも手出したの?」
「違う!」
「ねぇ、シュリは?」
「シュリは外泊許可下りなくて正月も病院だよ。」
「男とイチャついてないで面会行きなさいよ!」
「イチャついてねぇし午後から行く予定だよ!ていうか本当に何もねぇのか?」
「あー…大丈夫。」
徹とくだらない話をしていたら先程まで落ち込んでいたのが嘘の様に心が軽くなった。
「ねぇ、今日シュリの所に行くなら伝えといて。冬休み、お見舞い行けなさそうだから。自分でも後でメールするけど。」
「来れねぇの?」
「うん。ちょっと色々あってさ。ごめんね。」
「俺はいいけど…とりあえず伝えとくよ。」
「ありがとね。そろそろ安達さんに構ってあげなよ。」
「お前から電話してきたんだろ…ったく。とりあえず何かあったら俺に連絡してこいよ。どうせシュリには心配かけたくねぇとか思ってんだろ。」
「何かあんた、優しくなったね。」
一瞬の沈黙。
「…涼がうるせぇからそろそろ切るぞ。」
「あ、もしかして今照れたの?可愛いところあるじゃん!」
「うるせぇな、切るぞ!」
「はいはーい、またね。可愛い彼氏くんによろしく。」
「だから涼はっ…もういいや、めんどくせぇ。またな。」
そう言って徹は電話を切った。
何だかこのノリ、久しぶりだったな。
シュリと徹と三人で大学に通ってた時は毎日こんな感じだった。
そう思うと余計に二人に会いたくなった。
「…次はいつ会えるかな。」