第5章 母の裏切り
「ちょっと待ってお父さん…っ、冬休みの間にまた長野に…シュリのお見舞いに行きたいの!!それだけは行かせて下さい、お願いしますっ…!」
あたしは冬休みの間にまたシュリのお見舞いに行きたいと思っていた。
徹にも会いたい。
数日前、シュリにお見舞いに行くと言ったら喜んでくれた。
徹からもメールが届いて、待ってると言ってくれた。
夏休みに許可が下りたあたしは、冬休みも行けるものだと思っていた。
「駄目だ。」
泣きながら何度も何度も頼んだが、父は許してくれなかった。
その後父は、仕事関係の用事で出かけた。
あたしは母に詰め寄った。
「ねぇ、いつから見てたの?何でお父さんに話したの!?」
「…お父さんが、貴女が何処に出かけてるか少し気にしてたから。12月くらいから貴女の門限の時間にベランダから見てたのよ。あの男の子、外国人でしょう?貴女、遊ばれてるんじゃないの?危ない事に巻き込まれる前に縁を切りなさい。」
酷い偏見だ。
何も知らないくせに…。
「…違う。彼はそんな人じゃない!何も知らないくせに勝手なこと言わないでよ!!どうせお父さんの機嫌取るためにあたしを使ったんでしょ!?」
「貴女もお父さんの機嫌を損ねないようにすればいいじゃない。」
母は否定しなかった。
母に裏切られた事が悲しくて、紫音を偏見の目で見られた事が悔しかった。
「お母さん最低だよ!!」
あたしは自分の部屋に駆け込んだ。