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薔薇と向日葵~side story~

第5章 母の裏切り


新しい年を迎えた。

1月1日、元旦だというのに、朝から父の機嫌が悪かった。

重たい空気の中でおせち料理を食べていると、父が口を開いた。

「七瀬、最近頻繁に出掛けているけど何処に行ってるんだ?」

「え…?」

門限さえ守っていれば何も言わなかった父がいきなりこんな事を聞いてきたから驚いた。

「友達と遊んでるんだよ。サークルの先輩達と遊ぶ時もあるし…。」

本当は、ほとんど紫音と一緒にいる。
だけどそんな事、口が裂けても言えない。

「嘘をつくな!!」

父がいきなり怒鳴り、驚くあたしとは対照的に母は全く動じていない。

父は椅子から立ち上がるとあたしの頬を叩いた。

「男と会っているんだろう?」

父が冷たい目であたしを見下ろした。

「何とか言え!!」

戸惑って何も言わないあたしに苛立ったのか、また叩かれた。

「ち、違うよ…本当に友達だよ。」

「お母さんがお前が帰宅する時に毎回同じ男に家の前まで送られている所を見たと言っていたぞ。」

その言葉で母を睨むと、母はあたしと目を合わせようとしなかった。

いつから見てたの?
どうして父に話したの?

「何だその目は!!母親をそんな目で見るな!!」

今度は頭を叩かれ、あたしは咄嗟に椅子から立ち上がって逃げようとしてしまった。
その行動がまた、父の気分を逆撫でしてしまった。

腕を掴まれ、後ろから頭を叩かれた。

「まだ十代なのに頻繁に男と一緒にいる姿を近所の人に見られたらどう思われるか分からないのか!!」

父はあたしを母の前に座らせた。

「頭を下げてお母さんに謝りなさい。嘘をついた上に母親を睨み付けるなんて…。」

父はあたしの頭を上から押さえ付けて、無理矢理土下座をさせた。

「…ごめんなさい、お母さん…。」

母は何も言わなかった。

気が済んだのか、父はあたしから離れて椅子に座り直した。

「しばらく外出禁止だ。」

「えっ?」

あたしは立ち上がって父にしがみついた。
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