第4章 紫音の両親
正直、緊張した。
こんなに急に紫音の両親と会うことになるなんて思っていなかった。
「紫音と花音がいつもお世話になってるみたいだね。」
紫音のお父さんが口を開いた。
「あ、いえ。あたしの方こそいつもお世話になってます!」
緊張丸出しのあたしを見て、紫音の両親はクスクスと笑った。
「…紫音から聞いたけど、花音のことも理解してくれてるみたいね。ありがとう。」
「いえ、そんなっ…花音さん凄く優しいですし、自分が一人っ子だからお姉ちゃんができたみたいで嬉しいです。」
そう言うと、紫音の両親は驚いた。
「あ、あたし何か失礼なこと言いましたか…?」
紫音を見ると、微笑みながら首を横に振った。
突然、紫音のお母さんが泣き出した。
「花音のこと、そんな風に思ってくれてるのね。ありがとう。」
紫音のお父さんも泣きそうな顔でお母さんの背中を擦った。
「父さん、母さん。」
紫音が身を乗り出して真剣な顔で言った。
「今日はあまり時間も無いし、次いつ会えるかも分からないから今言うね。俺達、七瀬が大学卒業したらすぐに結婚するから。」
その言葉に紫音の両親は驚いた。
正直、あたしも驚いていた。
話の内容ではなくて、紫音がこんなに真剣に、ハッキリとした口調で自分の意見を話す事は滅多に無いから。
「本気なのか、紫音。」
「本気じゃなきゃ話さないよ。」
お父さんの問いかけに、紫音はハッキリと答えた。
「七瀬ちゃんも、本気で紫音と結婚を考えているのかい?」
「はい。」
少しでも誠意が伝わるように、あたしもハッキリと答えた。
すると、紫音のお母さんが呟いた。
「そしたら、二人が結婚したら花音は病院に入れましょう。」
病院に…入れる?
花音さんを物みたいに扱う様な言い方に腹が立った。
あたしは思わず怒鳴ってしまった。
「花音さんは入院させません!!」
紫音も、紫音の両親も驚いているがあたしは構わず続けた。
「ご両親は花音さんのこと恥ずかしいって思ってるみたいですけど、あたしは恥ずかしいなんて思わない…紫音と結婚したら三人で暮らして花音さんとも家族になるんだから!!」
部屋の中が静まり返り、あたしは我に返った。