第1章 二人の事情
紫音の家に入ると、綺麗な若い女性が玄関に来た。
紫音と同じ、白に近い金髪に灰色の瞳をした女性。
「おかえり紫音。あら、その子は?」
「俺の好きな人だよ。」
サラリとそんな事を言うから、あたしの方が恥ずかしくなった。
「初めまして。石川七瀬です。すみません、こんな時間にお邪魔して…。」
女性は柔らかな笑みを浮かべた。
「七瀬ちゃんね。私はこの家の妖精よ。」
「は…?」
あまりにも現実離れした発言に驚いたが、女性は至って真面目にそう言った。
「彼女は俺の姉だよ。」
紫音が私の耳元で囁いた。
この人が紫音のお姉さん…。
しかし何故、自分の事を妖精なんて言っているのだろう。
「妖精さん。俺達は部屋に行くね。」
紫音がそう言って微笑むと、お姉さんはニッコリと笑って頷いた。
三階にある紫音の部屋に入ると、そっとベッドの上に降ろされた。