第4章 紫音の両親
寝る準備を整えた花音さんは、自分の部屋に行く前にリビングに顔を出した。
「紫音、七瀬ちゃん。おやすみなさい。」
あたしと紫音がおやすみ、と返すと、花音さんがあたしを見つめた。
「どうしたの?」
「今年のクリスマスは七瀬ちゃんもいたからいつもよりも楽しかったわ。また来年も来てね?」
「うん、また来年も三人でパーティーしようね。」
「うん!それじゃあ、おやすみなさい。」
そう言って花音さんは自分の部屋に行った。
「8時くらいになったら置きに行こうかな。」
「そうだね。寝静まってからじゃないとバレちゃうもんね。ちなみにプレゼントは何にしたの?」
「今年はクマのぬいぐるみにしたよ。花音、ベッドにうさぎのぬいぐるみを置いてるんだけど…うさぎさんが一人だと寂しそうってこの前言ってたから。」
紫音は花音さんの言葉はどんなに些細な事でも覚えている。
本当に、優しくて良い弟だと思う。
あたしは紫音のそういう所が好きだ。
「七瀬、今日はありがとう。」
「あたしこそありがとう。楽しかったよ。」
「七瀬にもプレゼントがあるんだ。」
「え?」
紫音は鞄から小さな箱を取り出した。
「はい、クリスマスプレゼント。」
「え、うそ…あたし何にも用意してないよ!」
まさか紫音からクリスマスプレゼントを貰えると思っていなかったし、あたしも用意していなかった。
「いいからいいから。開けて?」
そう言われて箱を開けると、綺麗なネックレスが入っていた。
「指輪だと、親御さんに何か言われちゃうかなって思って…ネックレスにしたんだ。」
「あ、ありがとう…!」
嬉しくて泣きそうになった。
紫音の言う通り、指輪を付けていたら父に何か言われるかもしれない。
でもネックレスなら、毎日付けていても何も言われないだろう。
そんなところまで考えて選んでくれたと思うと嬉しさが増した。
「付けてあげるね。」
紫音は箱からネックレスを取り出して付けてくれた。
「うん、似合ってるよ。」
「本当にありがとう。ごめん、あたし何も考えてなくて…。」
「いいんだよ。初めてのクリスマスなのに二人きりで過ごせなくてごめんね。」
「ううん、あたしは花音さんも一緒で全然良いよ!今日、凄く楽しかったし!」
「ありがとう、七瀬。」
そう言って、紫音はあたしにキスをした。